「Google Glass」――それはビッグブラザーか、ドラえもんか:妄想ウェアラブルの午後
スマートフォンでできることをハンズフリーで、声だけで行うことができるメガネ型ウェアラブルの代名詞「Google Glass」。もしGoogle Glassがスマホに置き換わったとき、社会はどのように変わってしまうのだろう?
連載:「妄想ウェアラブルの午後」とは
近年急速に普及し始めたウェアラブルデバイス。腕時計型やメガネ型などさまざまな種類が登場してきているが、それらが「人々の生活をどう変えるか」についてはまだまだ議論の余地が残されている。本連載では、製品のスペックや機能比較にとらわれず、ウェアラブルの正しい(?)未来を「妄想」することに全力を注ぐ。
グーグル「Google Glass」
第2回「妄想ウェアラブルの午後」で取り上げるのは、グーグルのメガネ型ウェアラブルデバイス「Google Glass」。メール、電話、SNS、写真や動画、地図に天気、電車の乗り換えの確認……いま僕たちがスマートフォンを使ってやっていることをハンズフリーで、掛け声だけで行うことができるメガネ型ウェアラブルの代名詞だ。
現在はアメリカとイギリスだけで販売され、価格は1500ドル(約17万円)。近い将来、日本での購入が可能になることは間違いないだろう。
現在から最も近いディストピア
いま多くの人が持ち歩いているスマートフォンがGoogle Glassに置き換わったとしたら、どのような未来が訪れるのだろう。
まず最初に思い浮かぶのは、ジョージ・オーウェルの『1984年』のような、ビッグブラザーならぬ「Google Glass is watching you」の世界だ。Google Glassはスマホのように手に持って構えることなく、「Take a photo / Record a video」と言うだけで、あるいはウィンクをするだけで写真や動画を撮ることができてしまう。もし人々が当たり前のようにGoogle Glassを着けるようになれば、いつ、誰が、何を記録しているかを判別することは難しい。プライバシーなんてものはなくなってしまうだろう。
人と人のリアルなコミュニケーションも減ってしまいそうである。いまでさえ電車に乗ると多くの人がスマホの画面に釘付けになっている姿を見るが、これがGoogle Glassに替わったら、人々はさらに自分だけの世界に没入することになるだろう。映画『her/世界でひとつの彼女』でちょうどそれと似たような、人々が耳に着けた機器で思い思いにOSとしゃべっているというシーンがあったが、そのディストピアは十分に想像できるものだった。
火星の様子をリアルタイムで
なんだか暗い話になってきたので、物事の良い面にも目を向けてみよう。
すでにスマホ社会でも起こりつつあるが、誰もが写真や動画で記録できるということは、事件や事故がその場に居あわせた人によって記録される可能性が高くなるということだ。いわゆる市民ジャーナリズムの可能性は、Google Glassの普及でさらに大きくなるだろう。「悪いことをしても誰かに見られているかもしれない」という心理がはたらくことで、犯罪自体が減るんじゃないかとも思う。
またリアルなコミュニケーションが減るかもしれないと上では書いたが、Google Glassは同時に、ドラえもんのほんやくコンニャクのように今までコミュニケーションができなかった人と会話をすることを可能にするかもしれない。すでにGoogle Glassを使ったリアルタイム字幕翻訳アプリが開発されており、これから言葉の壁はより低くなっていく。あるいは犬や猫と話すことだってできるようになるかもしれない。
映画やドキュメンタリーといった芸術分野に関しても、Google Glassは新たな表現方法となる。自分以外の誰かの視点でその人の生活を覗くことができれば、それは究極の追体験になるからだ。メッシやコービーといった一流スポーツ選手の、宇宙飛行士の、アメリカ大統領の見ている世界がリアルタイムでUst配信されるなんてことも、近い将来可能になるかもしれない。それは感動をリアルタイムに、より多くの人に伝えるチャンネルとなる。
インパクトが大きいだけに、それが悪用されたときのデメリットも、良く使われたときのメリットも大きいGoogle Glass。果たしてそれはビッグブラザーになってしまうのか、それともドラえもんになれるのか――テクノロジーの使い方を考える、良いきっかけになりそうだ。
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