第3回 「Google Glass」は何に使えるか“ウェアラブル”の今(2/2 ページ)

» 2014年11月10日 08時00分 公開
[松村太郎ITmedia]
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Google Glassをかけての生活

 筆者がGoogle Glassを手に入れる前の2013年2月、カリフォルニア州ロングビーチで開催されたTED Conferenceで、Googleの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏がGoogle Glassをかけているのを見たことがある。同氏が会場にある芝生の広場でヨガをしていたときが、実際にGoogle Glassをかけている人を間近で見た、初めての経験だった。

 Google Glassはハンズフリーでスマートフォンを利用するという感覚での利用が中心となった。これはブリン氏の印象が強かったこともある。

 スマートフォンで我々はメールを読み、写真を撮り、地図で経路案内を見て、友人にメッセージを送る。こうした機能を、メガネ、あるいは視界の中に現れたディスプレイを用いて、声で操作しながら利用するのがGoogle Glassだ。

 ナビゲーションは、自分の視界の中に、地図と方向を示す矢印が表示される。これは、頭で考えてみると非常に使いやすいように感じるが、実際に試してみると、筆者にとっては相当な慣れが必要な作業だった。

 というのも、視界の上に画面が重ねられていて、画面の部分は当然透過していて実際の景色も見えるのだが、ついその画面に気を取られてしまい、他の視界がおろそかになってしまう。電柱にぶつかりそうになることが何度かあった。これでは、ハンズフリーにも関わらず、歩きスマホと同じではないか。

 徒歩ですら少し怖い思いをするGoogle Glassを、クルマの運転中にかけようものなら、そこで起こり得ることにはゾッとしてしまう。カリフォルニア州では、携帯電話などを手に持ちながらの運転や、両耳にイヤフォンを装着した状態での運転は禁止されており、Google Glassをかけての運転でも交通違反に問われたという事例があった。

 法令の問題以前に、個人的には危険だと感じてしまった。前述の通り、慣れの問題もあるし、視野の注意力には個人差もある。しかし、Google Glassは、すんなりと使い始めるには用途をいろいろ考え、見付ける必要があった。

ハンズフリーの恩恵を、まずはカメラで体験

 筆者がGoogle Glassで最も良く使う機能はカメラだ。

 通常、カメラで写真や動画を撮影するには、手に持って構える必要があるが、Google Glassはほぼ人の目と同じ視野で写真や動画を撮影できる。撮影には、「OK Glass, Take a photo / Recode a video」と音声コマンドを使うか、フレームの右側、カメラの上あたりにあるシャッターボタンを押すか、右目をウィンクすれば良い。

 ハンズフリーでの撮影は、GoProなどのアクションカメラをヘルメットなどに固定すれば同様のことができるが、Google Glassの場合、自分の意志でシャッターのタイミングを決めたり、目で見えている通りの様子を記録することができるため、より意図的な写真や動画を撮ることができる。

 例えば自転車に乗っているとき、料理中、ペットをお風呂に入れているビデオなど、Google Glassならではの写真やビデオを撮影するのは非常に楽しいものだ。Google+のGoogle Glassコミュニティで、「#throughglass」と検索すると、どんな風景が撮れるのかが分かる。

 Google Glassのカメラは、その結果が非常に楽しいため、ついのめり込んでしまう。その過程を通じて、ハンズフリーによって、今までスマホでは得られなかった場面や作品、あるいは意味合いを見出すことができた。カメラは、Google Glassの可能性を考え始める、非常に良いきっかけだった。

社会の中での軋轢と、活用の場

 Google Glassのメリットは、完全なハンズフリーと、声で操作できるアプリの存在が中心だ。例えば日本航空は、2014年5月から、Google Glassを利用できる米国内のハワイ・ホノルル空港で、航空機整備・貨物搭降載業務に携わるスタッフがGoogle Glassを利用する実験を行っている。

 特に整備の場面では、ハンズフリーでコミュニケーションを取ったり、資料を閲覧するなどの効率性が期待できるほか、貨物についても作業中に映像で貨物そのものを映し出せるため、確認などのコミュニケーションがより簡略化できることが期待される。本件については、実際に日本航空を取材する予定だ。

 またファッションショーでも、Google Glassとのコラボレーションが行われるパターンが出てきている。モデルがGoogle Glassを装着してランウェイを歩いたり、デザイナーがショーの最中の慌ただしいバックステージをGoogle Glassで録画するなど、今まで記録できなかった「その人の視点」の共有は魅力の1つと言える。

 しかしGooge Glassには録画中であることを示すランプがない。そのため、撮影してるかどうかは、相手からは分からないのだ。これによって、不快な思いをする周囲の人の意見も聞かれる。

 スマートフォンやカメラであれば、いわゆる「スマホやカメラを構えるポーズ」があるため、撮影しているかどうかは見て分かることが多い。しかしGoogle Glassはただそちらを向いているだけでも、ウィンクひとつで写真が撮れるのだ。特に東京のような集積度の高い都市の中では、敬遠されるデバイスとなった。

新たな用途を考えるためのエクスプローラープログラム

 Google Glass用のアプリは少しずつ増えているが、iPhoneやAndroidのような爆発的な増え方に至っていないのは、デバイスの価格によるところも大きいのだろう。カメラ、ハンズフリー、といった要素でGoogle Glassの実際のメリットを言い終えてしまえるあたりも、このデバイスの価値が実生活で高まっていないことの表れだ。

 しかし、だからこそ、Googleははじめから一般販売せず、エクスプローラープログラムとして用途の発見や需要について調べようとしてきたのだろう。

 おそらく向こう数年、ウェアラブルデバイスの本命は腕時計型のデバイスに収束していく。しかし、例えば医療の現場では、衛生面から腕時計型のデバイスは利用できないため、むしろGoogle Glassのようなデバイスの方がふさわしいだろう。

 また、Google Hangoutによる見たままの生中継も、業務でコミュニケーションを活用する際の効率性を大きく変化させてくれるはずだ。もちろん、自分がGoogle GlassからコールしたHangoutに映るためには、鏡の前に行かなければならないが、あるいは鏡の前でHangoutをしながら何か作業をする、というファシリティの変化も面白いかもしれない。

 筆者も含めて、Google Glassを購入した人の中には「どうしたものか」と悩む人も少ないくないのではないだろうか。しかし、だからこそ、まだ気づけていない可能性があるのではないか、という期待もある。もちろん、1500ドルという金額を払ったからこそ、期待せざるを得ないという面も、否定はしないのだが……。

試しにインタビューを、固定したiPhoneと、自分がかけたGoogle Glassで収録し、編集してみた。自分の視線で見た相手の表情を捕らえることはできたが、インタビュー中に「うなずくことができない」という思わぬ制限に悩まされた
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