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» 2015年01月10日 11時11分 UPDATE

“ウェアラブル”の今:第11回 “ウェアラブルイヤー”になる2015年、我々は何を身に付けるか

IT業界のこれからの1年を占うのに重要な展示会、International CESでは、2015年の注目トピックの1つとしてウェアラブルデバイスが大きな注目を集めていた。今年、私たちが身に付けるウェアラブルデバイスはどう変わっていくのだろうか。

[松村太郎,ITmedia]

 「“ウェアラブル”の今」、2015年最初の記事になります。ウェアラブルデバイスが、テクノロジー業界で最も大きな話題を占めるであろう今年、本連載でも随時、最新の情報をお伝えしながら、ウェアラブル時代について考えて行ければと思います。よろしくおつきあい下さいませ。

 さて、IT業界では年明けの恒例行事、世界最大の家電の展示会「2015 nternational CES」が、米国ラスベガスで開催されている。すでにさまざまなメディアでいろいろと記事が出ているが、今年の注目分野は、モノのインターネットといわれる「IoT」、クルマとIT、百花繚乱状態のドローン、そしてウェアラブルデバイスだ。

 これらの分野は決して無関係ではない。例えばウェアラブルデバイスが車の鍵になったり、IoTとウェアラブルデバイスが連携したり、お互いにインターネットやBluetoothといった通信を介して関係を持ち始める分野でもある。背後には人が持っているスマートフォンや、データが集積されているクラウドが存在している。

 この連載でも何度か触れてきたが、スマートフォンやクラウドを核として、これと連携して便利に動作するウェアラブルデバイスのパターンは、他の分野にも散見される。

ファッションとウェアラブルとニューヨークと

Apple Watch ウェアラブルデバイスの本命の1つと目されているApple Watch

 筆者は「Apple Watch」が発表されたAppleのプレスイベントの場で、米国、フランス、そして日本から訪れた多数のファッションメディアのプレスと出会っている。身につけるモノをこれまで専門に取り扱ってきたファッション業界から、現在のウェアラブルデバイスはどのように映るのだろうか。

 反応を聞いてみると、Apple Watchですら「キレイなガジェット」と見てはくれるが、ファッションアイテムというイメージを獲得するにはまだ道のりは先だ。メディアの比較でいっても、ファッションの方がテクノロジーよりも格が上だ。

 いくら人々の生活や仕事の仕方を変化させていても、この点はまだ変わっていない。米国らしい感覚として、「ニューヨーク」というキーワードがある。

 ニューヨークはフランス・パリと並んで、世界のファッションの拠点だ。そして米国のメディアの中心地であり、グローバル企業の本社がひしめく街でもある。同時に、決してテクノロジーの拠点ではないのだ。ファッションとメディアはニューヨークを中心に動く。これが米国だ。

 AppleがApple Storeをニューヨークの五番街やSOHOに配置するのも、最も人目に付きやすいグランドセントラル駅に作るのも、少しでもテクノロジーがファッションへ近づこう、あるいは彼らに選んでもらおうという意識の表れと言えるかもしれない。

 Apple Watchが、その試金石の1つとなるだろう。

ソニーが再び光り始める?

SmartEyeglass Attach! ソニーが2015 CESの会場で展示した、メガネに取り付けるタイプのデバイス「SmartEyeglass Attach!」

 2015 CESでウェアラブル分野へひときわ力を入れていたのがソニーだ。同社は「SmartWear」というブランドで多数のウェアラブルデバイスを展示した。昨年同社がCESで展示していたのは腕時計型デバイス「SmartBand」だけだった。

 その後腕時計型デバイス「SmartWatch 3」、Roxyなど新たなブランドとのコラボレーションも行っている「SmartBand」、テニスセンサーである「Smart Tennis Sensor」と拡大を続け、今回は加えて4モデルの参考出品があった。

 「SmartEyeglass Attach! 」は、0.23型の有機ELディスプレイを備えたアイウェアにアドオンする形のデバイスで、明るいところでも見やすく、また実世界の視界を妨げないという特徴を持っている。

 また「Smart B-Trainer」はセンサーを内蔵した音楽再生機能付きのBluetoothヘッドセットで、GPSや脈拍センサーを活用してトレーニングのアドバイスを聞くことができる仕組みを備えている。

 ソニーの強みをウェアラブルに注入していくアプローチが面白い。

 ソニーは、バッテリーの技術、ディスプレイの技術、そしてセンサーの技術を持っている。小型化、省電力化、高耐久性。これらを備えながらデザイン性に優れたパッケージを作り上げるノウハウは、ウェアラブルデバイスにとって非常に大きなポイントとなるはずだ。

 また、ソニーは音声・映像・ゲームの技術、音楽や映画などのコンテンツ、そしてヘルスケアなどのさまざまな分野にこれまでの蓄積を有している。ウェアラブルデバイスをより多角的に楽しめるものに仕上げることができる、世界でも数少ない企業といえるだろう。

ウェアラブルデバイスに見えない、「不在のテクノロジー」もテーマに

 デジタルデバイスは、使っていることが分かることもとても大切な“アピール”材料だ。例えばAppleのiPodに付属した白いイヤフォンは、iPodを使っている1つのアイコンとなり、いくらでも良いヘッドフォンがあるにもかかわらず、付属のイヤフォンを使い続ける人々がいたくらいだ。

 しかし一方で、あからさまにテクノロジーを使っていることが分からないようにすることも、求められる機能の1つと言えるかもしれない。ファッションとテクノロジーの融合がまだ十分でない現在においては、特に求められる場面が多い状態だ。

 ウェアラブルデバイスに見えないデバイス、テクノロジーに見えないテクノロジー、という1つの“擬態”とでも言うべきだろうか。

 例えば、フランスWithingsの時計「Activite」はどうだろう。

Activite Pop WhithingsがCESで発表したActivite Pop

 Activiteはパッと見ただけではデジタルらしさは一切感じない、完全なる「端正なアナログ腕時計」だ。サファイヤガラスとステンレススチールのケース、そして文字盤にはムーブメントがスイスで組み立てられていることを示す「Swiss Made」の文字。

 時計のための3本の針と、ゼロから100までを270度で表す文字盤が備わっている。これは歩数などのゴールまでの達成度を表すそうだ。中には加速度センサーとバイブレーターを搭載しており、Bluetooth LEでスマートフォンアプリと連携する、ウェアラブルデバイスのデザインパターンをきちんとおさえている。

 結果として、時刻合わせなどもすべてアプリから行うことができるため、時計本体には竜頭やボタンすらない、すっきりとしたデザインを実現したのだ。

 この腕時計は、日々の充電は必要なく、8カ月間内蔵ボタン電池のみで動作する。見た目も体験も、完全に腕時計、しかしアクティビティトラッカーや睡眠計測といったウェアラブルデバイスの役割をきちんとおさえている。

 2015 International CESではActiviteの廉価版「Activite Pop」が登場した。Activiteが450ドルという価格であるのに対し、Activite Popは150ドルという価格がつけられた。

革バンドこそ付属してこないが、文字盤とシリコンバンドはカラフルでさまざまな組み合わせを選べ、普通の時計用のバンドに替えることもできるという。

 デジタルデバイスに見えないが、きちんと役割を果たしてくれる、美しいウェアラブルデバイス。Activiteを見ていると、「不在のテクノロジー」という新しいデザインパターンとして、より多くのファッションブランドが取り組んでいくと予想できる。

 その核に入る、スイス製のムーブメントのようなキットを作る企業が現れると、非常に大きなビジネスの可能性をもたらすのではないか、と考えている。

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