第8回 Oculus Rift×「進撃の巨人」――情報や作品を「体験」に変えるデバイス“ウェアラブル”の今(2/2 ページ)

» 2014年12月15日 15時00分 公開
[松村太郎ITmedia]
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体験する人に合わせて、進化させていく

 巨人から土地を取り戻すというストーリーを体験できる360°シアター。物語の中の1人の五感を存分に楽しめる、とても価値のある作品だった。特に原作・アニメに触れていると、巨人に恐れをなしながら戦う世界に入れる面白さもひとしおだった。

 関氏は公開前、体験者の反応について、あらゆる面で不安があったという。

 「この体験がどのように受け止められるんだろう、という予測ができない点が不安でした。原作のファンに納得してもらえるだろうか、というコンテンツのできだけでなく、5分間のバーチャル体験に、展覧会とは別に600円を払ってもらうという値付けもまた、チャレンジだったと思います。初日を迎えて、一般のお客さんに、シーンごとに『きゃーきゃー』といいながら楽しんでいただけていたので、シンプルに成功だと思いました」(関氏)

 ただコンテンツの長さは5分が限界だったとも話す。おそらくワイヤーアクションが30分続くと、いくら座りながらの体験でも、耐えられなかっただろう。それが、現段階での限界なのか、人間の通常の感覚として今後も変わらないのかは、まだ分からない。

 一方、コンテンツの長さ以外にも取り組めることはあるという。関氏は例えばの話として、監督の谷口氏の「コンテンツを体験し終わってOculus Riftを外したら、自分がいる部屋自体が変わっている、というトリックも面白いのではないか」というアイディアを話してくれた。バーチャルリアリティは、いかにその人の感覚をだますか、という面白さがあり、コンテンツも含めたすべての体験の作り込みを自由に行える点が魅力と言えるだろう。

Oculus Riftの今後

 今回のコンテンツに一定の手応えを得ていると話す関氏。こうした没入感にフィットする作品選びと、その世界観を深く理解して作り上げる楽しさがあるという。

 Oculus Riftそのものをたくさんの人に体験してもらう今回の企画で、課題はヘッドマウントディスプレイとヘッドフォンのワイヤレス化だと話す。

 「例えば、ヘッドマウントディスプレイはメガネをかけている方への調整も大変だし、ディスプレイとヘッドフォンそれぞれに出ているケーブルも、前後左右を向いたり、身をよじらす可能性があるバーチャル体験では邪魔な存在です。しかしワイヤレス化では遅延の心配もあります」(関氏)

 遅延は、こうした体験の最大の敵だという。そもそも映像がカクカク動くのではバーチャル体験として人をだましきれなくなる上、例えば自分がふりかえったときに映像が遅れると、酔いの原因にもなる。ワイヤレス化と高速伝送は、ヘッドマウントディスプレイによるバーチャル体験普及の、デバイス上の課題と言えそうだ。

 「正直、大変だった」と話す一方で、勘所をつかんだとも話す関氏。情報や作品を「体験」に変化させるウェアラブルデバイスが、日常となる世界は、コンテンツやサービスの進化とともに、我々の感覚の進化も必要となるだろう。

進撃の巨人展 進撃の巨人展では、マンガの原画や未公開の書き下ろしなども見ることができる
進撃の巨人展 作品の中で登場する小道具なども展示されている
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